2022.4.7
2022年に入って3カ月が飛び去っていった。心にダメージを受ける出来事ばかりが続きますが皆様いかがお過ごしでしょうか。平穏な日々が早く訪れることを願う……。
僕はまぁ何とかやっています。今年に入って初めてかな、一瞬の空きが生まれたのでこれを書いています。バタバタが続いて記憶が飛びがちなのでここでひとつ楔というか、今現在の思考の断片みたいなものを記しておきたくて。仕事以外で自分の言葉を発することへの漠然とした怖さみたいなものはあるけれども。
まずはこの「怖さ」について。仕事柄、他者の言葉を引き出したり、他者の作品について書くことが多いから(批判も好きじゃないし)なかなかクリエイターとして見てもらえることは少ないのだけど、自分自身のマインドとしては物書きだし、クリエイターの方々の思考に共鳴することがとても多い。これは先日、感銘を受けたサカナクションの山口一郎さんのインタビューでの発言。
「その作品をどんな人が作っているのか。特にコロナ禍になってから、より“作品”と“人”が結び付けられ、清廉潔白といった誠実性が過剰に求められるようになりました」
https://news.yahoo.co.jp/articles/9cd329ab0a057fa12b301432326e19fbf10a705e
本当にその通りで、「映画の見方」みたいなものもこっちに寄っていってる感覚がある。僕はそもそも映画に「見方」なんてものはないし、自由に観て自由な感想を持つのが健全だと思うから(それを他者に向けて発信するかはまた別の問題)、ちょっと戸惑ってもいる。
そして強く思うのは、「穏やかでいたい/いてほしい」ということ。僕自身も、僕のことを知ってくださっている方においても、のんびり穏やかに過ごしてほしい。だからこそいま、自分から何かを発言するという行為自体に対して、もっともっとシビアに考えたいモードに入っている。他者と簡単にコミュニケーションをとることができる時代だからこそ、制限をかけることでその希少性や尊さをもっと感じたいというか、畏れをちゃんと持っていたい。
…みたいなことが前提というか、いま自分の心を占めている感覚かな。大切なことだと思うんですよね。人と接することって特別なのだという気持ち。言葉を発することに対する怖さの自認。そもそも、みんながみんな自分の感情を簡単に言語化できるわけがないんです。でもいまはその瞬間に沸いた感情をとりあえず言葉に変換したインスタントなものをすぐ出せちゃう。しかもその際に「これを読んだ人がどう思うか」みたいな自己検閲も校正も挟まない。怖いよね。すごく怖いなぁと思う。だから僕は僕自身にブレーキと安全装置を増やしたい。
この3カ月の歩みを書こうかと思ったけど、長くなってしまったのでそれはまた改めて……。
2021.12.31
2021年12月31日の20時30分過ぎ。あと3時間30分で今年が終わる。終わらないのは仕事だけだ。有難さと疲労感の両方を抱えながら、今この文章を書いている。
2020年の夏に独立してから、こういったブログ的な文というか、を書いていなくて、なんだか久しぶりの感覚。記事とかとは勝手が全く違うので、昔はどうやって書いていたっけな……みたいなことを考えているけど思い出せない。これを機にちょいちょい書けていったらよいなぁと思ったりする。時間があれば。
なぜ重い腰を上げてこの文章を書こうと思ったのかというと、「思い出せない」から、というのが大きい。前述したように2020年の夏に独立したため、完全にフリーランスで一年走り切ったのは、2021年が初だった。メモリアル・イヤーだからちゃんと記憶に残しておきたいのだが、自分でも引くほどに一つひとつの出来事を思い出せない。断片的な記憶はあるのだけれど、モヤがかかっていたり破損していたり、或いは薄まっていたりと、悲しい状況になっている(あんなに嬉しかったのに!)。それはひとえに自分のメモリのキャパを超えているからで、とにかく忙しくて頭も心も付いて行っていない。強くあるのは、「何もかも変わってしまった」という感覚くらいだ。メモリが振り切れたという意味でメモリアルなイヤーであった。
しかしそれはもったいないと思うし、申し訳なく感じる。誰かが声をかけてくれたからその仕事ができたわけで、やっぱり一つひとつの仕事をもっともっと大切に覚えておきたいのだ。ということで、この場を借りて2021年に自分にあったこと(仕事面)を軽くおさらいしたい。
この仕事を始めたばかりのときに、夢想していたことの一つ。パンフレットに自分の書いた文章が載ること。いち映画好きとして、やっぱりこれは目標だった。今年は『ヤクザと家族 The Family』『あの頃。』『ビバリウム』『ゾッキ』『るろうに剣心 最終章 The Final』『くれなずめ』『ドライブ・マイ・カー』『DIVOC-12』『唐人街探偵 NEW YORK MISSION』『恋する寄生虫』『幕が下りたら会いましょう』『明け方の若者たち』などに書かせて頂いた。めっちゃ嬉しかったです。ありがとうございます。
パンフレットはオフィシャルライターとしてプレス(マスコミ用のパンフ)を書かせていただいたものも多く、独立前後に先輩から「オフィシャルを任されるようになったら強い」と言われていたこともあって、そういった意味でもめっちゃ嬉しかった。上記の作品以外にも『浅草キッド』『マトリックス レザレクションズ』『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』などに関わらせていただいた。本当に光栄です。
そしてオフィシャル周りでいうと、やっぱり『DIVOC-12』。去年の秋から約1年オフィシャルライターをやらせていただいて、プレスにパンフにインタビューにイベントMCに……と、ありえないくらいのチャンスをいただいた。感謝してもしきれないし、MCの仕事がぽつぽついただけるようになったのは、間違いなくこの作品のおかげ。終了後にはロスになってしまうくらい(ぶっちゃけまだ続いている)で、なんというかこの作品と過ごした時間はライター人生のピークだった。ここまで敬意をもって接してくださる現場はありません。
さらにスターサンズ作品。元々スターサンズの作品が大好きでいちファンとして追いかけていたのだけど、『ヤクザと家族 The Family』のイベントやスターサンズ映画祭のMC等々、多くのチャンスをいただけた。スターサンズの皆々様、藤井道人監督、キコリの皆々様、パブリシストのNさん等々、本当にありがとうございました……。
また、オフィシャル周りで今年はマジでうれしいことがあって、それは愛してやまない長澤知之さん(15年にわたって影響を受け続けているミュージシャン)と一緒にお仕事をできたことだ。書くと長くなってしまうから短く留めるけれど、こんなことが自分の人生に起こるとは夢にも思っていなかった。奥さんに「いつか長澤さんと仕事できたら」と話していたことはあるけど、妄想と夢想のカタマリで、到底人に言えるようなものではなかった。長澤さん・オフィスオーガスタの皆様への恩返しは、今後も頑張っていきたい。生きていてよかった。
そして、学生時代から憧れの存在だった「装苑」で連載をもたせてもらえることになった。昔も今も、とにかく自分をアップデートしてくれるメディアで、とても恐れ多い。もっと頑張って、ちゃんと貢献したい。それもこれも、編集者のMさんのおかげです。
新しい挑戦でいうと、「話す」仕事が増えたこと。MC仕事もそうだし、リアルサウンド映画部さんでのドラマ感想生配信や、共感シアターで月イチ番組を持たせていただくことになったり……。僕は元来人と話すことが苦手で、人見知りも結構激しいし、心を許して話せる存在はほとんどいない。だからびっくりしているし、頑張らなきゃと思う。
あと、素晴らしい俳優さんや監督さんが、インタビューでお会いした時に「おっ久々」みたいに声をかけてくださったこと。嬉しさと畏れ多さと申し訳なさと、なんだかぐるぐるしている。ただ、まだまだ自分はそんな風に扱っていただける領域にいないということはわかっているから、ちゃんとしたいです。ここは本当に大きいな。自分が肩書を「物書き」に変えたいと決めて動いたのも、プロ中のプロの方々が、「ライターさん/インタビュアーさん」でなく、僕個人を見てくださったから。早く大きくなって、恩を返したい。
ただ、そういった後押しに対して、自分のキャパを超える量の仕事をさせていただいたことによる心身のバランスがわからなくなってしまったこと、そして周囲から求められる人物像みたいなものに対する戸惑い……。これらが自分の中でぐちゃぐちゃになっていて整理がつかない状態がずっと続いている。
あと、映画を全然観られていないです。これきっつい。いままでの自分だったら初日に映画館に飛び込んでいるような作品を後回しにせざるを得ない状況は、なんとかしたいな(特に海外の作品)。小説も漫画ももっと読みたいし、1年全く休みがなかったから、自分のための時間を取りたい。このままだと、ひとつの方向に流されていく。ひとつの道を究めるというのもとても大切なのだけれど、自分自身がやりたいことはやっぱり違うなと思う。
こういった色々が重なり、自分の個人的ないまの目標は、「取り戻す」みたいなものだと感じている。1年半、とにかく身に余るチャンスをいただき続けてきて、全然返せていないのにこういうことを考えるのもどうなのかなと悩んだりもするけれど、きっとそこで経験をさせていただいたからこそ、これまでとは違う「自我」の確立というところに心が向かうに至ったのだと思うし、それは極めて自然なことなのかもしれない。
肩書を「物書き」に変えたのも、そういうこと。自分のために創作をする時間をもっとちゃんと取る。自分のために映画を観る時間をもっとちゃんと作る。仕事以外で人前に出る機会は減ると思うけど、このフェーズの次にあるものは両方が合致したスーパーなものになると感じているし、そこに到達するためにもここから先は一端、僕は引っ込みたい。
インプットとアウトプット。ものづくりにはそのダブルが不可欠で、仕事としてのインプットとアウトプットのバランスも立て直したいし、アウトプットにおいても仕事と個人の創作とを両立させたい。させていかないと、割とすぐ潰れる気がする。
先日、大学時代から一緒に芝居をやっていた恩人と3年ぶりに再会して、日々対話をしながら、創作活動を行っている。すごく生きている感じがするし、あの頃の感覚を取り戻させてもらっている。詩を書いたり戯曲を書いたり、小説の構想を練ったり……。これだ!って思う。日常の一つひとつが色を取り戻していくというか。
…というようなところに、今現在の僕はいます。一言でいうと、すごくワクワクしています。
良い年にするぞ。
最後になりましたが、2021年もありがとうございました。
2022年が、お互いにとって充実した1年になりますよう。
SYO